災害に見舞われた方々に心よりお見舞い申し上げます。皆様の一日も早いご再建をお祈りいたします。
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実験的なトップ材のギターを製作中です。
中央はシトカスプルース、両サイドはイングルマンスプルースです。
両サイドの材は追い柾目の材を選びました。追い柾目の材は幅方向の剛性が落ちるので、手工ギターのトップ材として好んで使う製作家は少数だと思われます。私も通常は柾目と追い柾目の材があれば前者を選びます。
しかしまとめて材料を仕入れる際には追い柾目の材が含まれることもあるので、どうすれば特性を活かせるのかを長年考えてきました。もちろん他の部材に流用することはできるのですが、トップ材として仕入れる材は針葉樹の大トロのようなものなので、やはりトップ材として使えればそれに越したことはありません。
そこで、『追い柾目の材を傾けて接ぐことで幅方向の剛性を上げたら良い結果が生まれるかもしれない』と思い今回の製作に至りました。もちろん幅方向の剛性が上がる一方で長手方向の剛性は下がりますので、中央に強靭なシトカスプルースを入れることで全体の剛性を担保しています。もちろん力木にも工夫を加えます。
ご承知の通り、3PトップのギターはSergei de JongeさんやAndrea Tacchiさん等が製作されており、それらはスプルースとシダーの特性の違いを利用してより大きく振動させたい箇所と剛性を上げたい箇所をコントロールする目的のようです。また、お2人の3Pトップのギターは高い評価を得ていますが、そもそも通常トップで最高峰のギターを製作されているので、3Pトップのギターが良い理由が材ではなく腕によるものであることは留意すべき点です。
さて、今回私が製作しているギターは材の種類ではなく木目の違いによるそれぞれの特性を活かすことが目的ですので、多少違ったアプローチではあります。共通点は、良い製作法が見つかれば作り手にとっても弾き手にとっても良い選択肢が生まれることです。
いずれにせよ出る音と弾き手の感じ方が全てですので、特別な期待も憂慮もせず淡々と作業を進めてまいります。