Ryosuke Kobayashi Guitars

神奈川県相模湖に工房を構えるギター製作家・小林良輔のブログ。製作日誌や理念を綴っています。

Top purling channel cutting jig

I spent a whole day to make a top purfling channel cutting jig with a down cut spiral bit. It should work well effortlessly for climb cuts of German spruce with non-tight grain.

 

トップ板のパーフリング溝を掻き取る治具(製作補助具)を作りました。

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この箇所です。

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この加工は電動工具を使った様々な治具や大型機械を使う方法が主流です。もちろん毛引きや鑿を使い手作業ですることも可能で、ベストな方法は製作家によってそれぞれでしょう。私は製作学校や修行先などでいくつかの方法を見てきた結果、現在は電動工具を固定してギターを動かす方法を採用しています。今回作ったのはいわゆる"binding jig"の一種で、その中でも(ケバや欠けの起きやすい)トップ板のパーフリング溝に特化した治具です。主な狙いは、

  • ダウンカットのスパイラルビットを使うための設計
  • ガイドがサイド板の2点に接地することでサイド板と直角に加工できる設計
  • ガイドとビットの心を合わせることでガイドのどこに当たっても均一な幅に加工できる設計

です。

 

ダウンカットのスパイラルビットです。左回りに刃がついています。

刃径がトリマーの軸径(6.0mmか1/4インチ)と同じだとダウンカットビットはたくさんあるのですが、それだと径が小さ過ぎてビットとガイドの心を合わせて十分な幅を削ることができません。今回は上記の3つの狙いを満たすために、まずはトリマーがつかめる軸径でなるべく大きな刃径のダウンカットのスパイラルビットを選定し、それに合わせて他の部品の寸法を決めていきました。

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ベースはアルミ板で、トリマーガイド、溝加工時にガイドとなるアルミパイプ、Rのついた面を均一な深さで掘るためのドーナツ(フランジを加工)などを使いました。f:id:RyosukeKobayashiGuitars:20250414173242j:image

 

治具製作中の作業台です。f:id:RyosukeKobayashiGuitars:20250414173246j:image

 

これらは元々使っている治具です。左はCanadian Luthier Supply製、中央はElevate Luthierie製、右は自作です。

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それぞれ素晴らしい治具ですので、トップとバックをリムに接着した後の余剰板の掻き取りやバインディング溝の掻き取りなどに今後も使う予定です。

 

ギターは楽器です。工夫した治具を作ることで単純加工の労力を少しでも圧縮し、その分を音色・弾きやすさ・デザインに費やしていきたいと思っています。

 

(2025.7.10追記)

狙い通り、ケバやチッピングが起きやすいスプルースの木口面を綺麗に加工することができました。

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