ロゼッタ(口輪)には、様々なデザインがあります。クラシックギターでは製作家の"署名"とも言える箇所なので、基本的に一度定まったデザインは固定することが多いようです。一方で鉄弦ギターにおいては、積極的に新しいデザインを採用していく傾向があるように感じます。鉄弦ギターはボディサイズによってサウンドホールの径が変わるため、全てのモデルに共通するパーツやテンプレートを作ることが困難であることもその一因かもしれません。
私は鉄弦もナイロン弦も製作しますので、形にしたいデザインが浮かべばその都度試しています。
今回は、下のロゼッタに込めた思いとその製作過程をまとめたいと思います。
このロゼッタの中央部分は、手を握っている様子をモチーフとして図形化&簡略化したものです。(手が汚くてすみません。)
というのも、先の米大統領選、ブレグジット、対中包囲網、SARS-CoV-2等、ここ数年間、様々な場所で様々な"分断"が加速度的に進んでいます。(私は専門家ではありませんし、このブログは1人のギター製作家の小さな発表の場ですので、それぞれの"分断"に関する個人的な見解は控えます。)
月並みな表現ですが、そんな渦中にあるからこそ、時代や文化や国境や人種を越えることができる音楽は本当に偉大で尊いものだと感じるのです。
その音楽を生み出す道具を製作する者として、"繋がり"を表現したのが写真のロゼッタです。
内側と外側から伸びている線は指と指が交差している様子を(図形化)、白と茶色と黒は異なる肌の色や共通の爪の色を意味します。また、5本の指を1つの単位として繰り返しのデザインになっています(簡略化)。
あまり語り過ぎても間延びしますので、製作過程に移ります(笑)。
モチーフとなる中央部分のモザイクを作ったら、次はトップ板に溝を掘ります。
溝にモチーフ(と内外のライン)を埋めて、トップ板と面になるよう削ります。
次に、自在錐でカービングの補助線となる溝を掘ります。
ちなみに自在錐は今回新調しました。これまでは随分前に試作ロゼッタを作るために間に合わせで作ったサークルカッターを使っていたのですが、何とか仕事をしてくれていたのでいつの間にか8年も使っていました(笑)。
カービングする箇所を罫書いて、
彫ります。
完成です。
以上、このロゼッタに込めた思いと製作過程でした。
繋がりの社会になりますように。