Ryosuke Kobayashi Guitars

神奈川県相模湖に工房を構えるギター製作家・小林良輔のブログ。製作日誌や理念を綴っています。

レイズドフィンガーボード(Raised Fingerboard/RF)仕様のギター について

先日、製作中のナイロン弦ギターの製作過程をSNS上に投稿したところ、RF(Raised Fingerboard)の箇所をクローズアップした写真に他よりも大きなリアクションを頂きました。

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そこで、私が理解している範囲でRFについて、またRFがもたらす効果とその理論(あるいは理屈)についてこちらにまとめておきます。

 

 

【呼称】

・RF/Raised Fingerboard(レイズドフィンガーボード)

・EF/Elevated Fretboard(エレベーティッドフレットボード)

等と呼ばれます。

 

 

【歴史】

1985年にThomas Humphrey(トーマスハンフリー)氏がデザインしたギターで一躍脚光を浴びることとなりましたが、古くはStauffer(シュタウファー)をはじめとする初期のクラシックギター 、さらに辿ればイタリアの古楽器などで既に見られた構造のようです。

 

 

【目的】

現代のクラシックギター においては、『弦がブリッジ(トップ板)にかける力の向きを変える』ことが最大の目的です。つまり、ネックの仕込み角を大きくネガティブ/マイナスにすることで、弦がブリッジをヘッド方向に引っ張る力を(ギターの)正面方向に引っ張る力に変換するのです。その結果、トップ板のロングダイポール運動を幾分かモノポール運動に変換することができます。

 

 

【効果】

モノポール運動の成分が増えることで、

・音量が増す

・サステインが長くなる

・プロジェクション(音の遠達性)が増す

ことが期待されます。

 

また、RFの副産物として、

・ハイポジションへのアクセスが向上して多少弾きやすくなる。

・ジョイント付近が強固になることでハイポジションのフレッティングがよりシビアに行うことができる。結果、ハイポジションでの弦高が下げられる。

ことも大きな利点です。

 

 

以上がRFがもたらす構造的な違いとトップ板の振動(音色)の変化です。ただし、楽器は"百聞は一奏にしかず"です。是非ともRF仕様のギターを弾いて&聴いて、その違いを感じてください。演者によって求める音も感じ方も違いますので、弾いて感じたことが全てです。

 

また、鉄弦ギターにおいてはRF仕様にする目的とその効果が大きく異なります。この辺りについてはまた後日まとめようと思います。

 

最後に、いくつかRF仕様の過去作品の写真を載せておきます。

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※2020/8/7追記

SNS上でRFの構造を少々誤解しておられる方がおられました。"Raised Fingerboard"という呼び方が一般的ではありますが、構造的には指板(Fingerboard)が上げられて(Raised)いるのではなく、トップをもぐらせて(沈み込ませて)います。そのため、ギターを抱えた時の奏者とネックの位置関係は通常のギターと一切変わりません。手書きでわかりにくいですが、SNS上での説明に使った画像を添付しておきます。

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厳密に言うと正確な図ではないのですが、『トップをもぐらせる』構造をイメージするのに役立てば幸いです。