Ryosuke Kobayashi Guitars

神奈川県相模湖に工房を構えるギター製作家・小林良輔のブログ。製作日誌や理念を綴っています。

Kenny Hill さんに材料をお譲り頂きました。

ギター製作家のKenny(Kenneth) Hillさんがセミリタイアするにあたり、長年に渡りストックされてきた材料をお譲り頂きました。

 

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事の発端は今年の夏、隣町に工場を構えるパイプオルガン建造家の横田宗隆さんに頂いた一言でした。「アメリカに住む友人の知人がギタービルダーで、近々引退されるにあたり材料の買い手を探しているそうです。良輔さんご興味はありますか?」

 

munetakayokota.com

 

横田さんは国内外での修行を経て1983年にアメリカで独立された著名なオルガンビルダーです。独立後はカリフォルニア州立大学の依頼をきっかけに、オルガンを建造する現地で職人や材料を調達する"on-site construction(オンサイト・コンストラクション)"を200年ぶりに成功させ、スウェーデン国立ヨーテボリ大学の客員教授等を経て2015年に帰国されました。名実共に現代を代表する偉大なオルガン建造家です。私はひょんなことからご縁を頂きほんの一部ではありますが、宮崎ルーテル協会のオルガン、明治学院大学のリードオルガン修復、そして現在建造中の千葉県市川市にある某施設のオルガンなどのお手伝いをさせて頂きました。

 

同じ"工作家"として尊敬してやまない横田さんにお声がけ頂いたので、私は二つ返事で「はい、興味があります。是非購入させて頂きたいです。」とお答えしました。

 

その後、引退されるギター製作家がかの有名なKenny Hillさんだと知ったときの私の驚きは皆様のご想像の通りです。流れとしては、Kennyさんが現地の近しいご友人であるヒロコさんに材料のご相談をされ、ヒロコさんが"楽器繋がり"ということで旧知の仲である横田さんにご相談され、横田さんが私にお話しをくださったのです。

 

材料の購入にあたり国内の製作家仲間にお声がけをした結果、9つの工房で約260セットを共同購入をする運びとなりました。また、ケニーさんがご高齢ということもあり、梱包と日本への発送は現地在住のギター製作家であるM.M.さんが引き受けてくださることになりました。(M.M.さんは私が最も尊敬する製作家の1人です。ケニーさんの近くにお住まいということもありご相談させて頂いたのですが、私の見通しが甘く結果的にはM.M.さんに大変な労力とお時間をとって頂くことになりました。発送や輸出入申告のための膨大なやりとり中で心苦しく感じることが多々ありましたが、M.M.さんは終始懇切丁寧に対応してくださいました。以前ベテラン製作家の方が"一流の製作家は一流の人間でもある"と仰っていたことを思い出し、私もM.M.さんの背中から多くを学ばせて頂きました。M.M.さん、ありがとうございました。)

 

今回の出来事を通じて多くを学び多くを感じました。ケニーさん、ヒロコさん、横田さん、M.M.さん、そして共同購入された製作家の皆様、心より感謝を申し上げます。ありがとうございました。

 

頂いた貴重な材料に新たな命を吹き込めるよう益々精進いたします!